安全なカーブのカタチ
安全なカーブには、曲がり具合の変化が一定の曲線が使われています。
道路づくりに欠かせない曲線
道路を安全に運転するために、道路づくりにも数学が使われています。自動車を一定の速度で走行しながら、ハンドルを一定の割合でゆっくり回し続けて運転したときにできる自動車の走行線は「クロソイド曲線」という曲線を描きます。そのため、クロソイド曲線を用いて作られた道路は、自動車が自然に無理なくカーブすることができます。
安全な道路の設計
高速道路の設計では、道路の直線部分と円弧区間を繋ぐ緩和曲線としてクロソイド曲線の一部を利用しています。
道路のカーブが、図1のように直線から急に円弧区間に入ると、円弧区間に入った途端にカーブに合わせてハンドルを急いで回し、カーブを出た途端にハンドルを急いでまっすぐに戻さなければなりません。ところが、図2のようにクロソイド曲線の区間をはさんだカーブでは、直線区間からクロソイド曲線の区間に入るときに一定の速度でハンドルを回し続け、円弧に沿って走るときにはハンドルを回したまま固定しておき、またクロソイド曲線の区間に入るときにハンドルを同じ速度で戻すという操作をすればよいわけです。そのため、ハンドル操作が簡単になり、走りやすい道路になります。また、体への負担も少なくなり、事故が起きにくい安全な道路設計になります。さらに、クロソイド曲線を用いて設計することで、道路が流れるような美しい形になります。
世界で最初に高速道路にクロソイド曲線を取り入れたのは、ドイツが戦後に建設したアウトバーン(高速道路)だそうです。日本では、国道17号線の三国峠の道路改良のときに初めて設置されました。
クロソイド曲線の式とグラフ(詳しく知りたい方向け)
クロソイド曲線は、曲線の曲がり具合を表す曲率の変化率が一定である場合に描かれる曲線です。クロソイド曲線は媒介変数を用いて
と表され、グラフは下図のようになります。
クロソイド曲線は、イタリアの数学者アーネスト・チェザロにより、名付けられました。「クロソイド」という名前は、ギリシャ神話に登場する人間の運命の糸を紡ぐとされる女神の名前クローソーが由来だといわれています。扱う分野によって、オイラー螺旋、コルニュ螺旋などともよばれています。
さまざまな分野で活躍するクロソイド曲線
クロソイド曲線は、鉄道の線路や遊園地にある垂直に1回転するジェットコースターなどにも使われています。ジェットコースターの縦回転のループに、クロソイド曲線区間がなく完全な円の場合、カーブに入った途端に乗客に負担がかかり、「むちうち」などの危険な状態を引き起こす可能性があります。クロソイド曲線は、安全には欠かせない曲線なのです。
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