コラム – 表現と数理

人間が最も美しいと感じる比率といわれる黄金比(1:1.618…)。自然界や建築物に黄金比が見いだされるといわれ、様々な立場から議論が続いています。

図形の性質によるデザイン

数学の世界を表現している切り絵アーティストのある作品は、「ピタゴラスツリー」と呼ばれる図形をベースに制作されています。

三平方の定理を使ったデザイン(岡本健太郎 制作):イメージ
三平方の定理を使ったデザイン(岡本健太郎 制作)

ピタゴラスツリーは、正方形の一辺に直角三角形の斜辺が合わさっている構造の繰り返しになっています。三平方の定理(ピタゴラスの定理)という、直角三角形において、斜辺の長さの二乗が他の二辺の長さの二乗の和に等しいという定理から、赤い正方形の面積が2つの青い正方形の面積の和に等しくなります。青の正方形の面積もそれぞれ接している黄色い正方形の面積の和と等しいので、赤の正方形の面積と4つの黄色の正方形の面積の和も等しくなります。この定理を考えて先ほどのデザインを見てみると、各色の面積の和はすべて等しくなります。

ピタゴラスツリーの構造:イメージ
ピタゴラスツリーの構造

また、ピタゴラスツリーのように、部分と全体の形が相似となるような構造を「フラクタル」と呼びます。

数理モデルが作るデザイン

現象の特徴や性質を見つけ、それを数式で表したものを「数理モデル」といいます。数理モデルを洋服のデザインに活かしたドレスがあります。

ある環境における生物の個体数を予測したいとき、毎年同じ割合で増えれば、予測は簡単ですが、実際にはさまざまな条件が関係し、適度に増加や減少をしています。こうしたことを考えて、ある生物の個体数が時間の経過とともにどのように変化するかを二次関数で表す数理モデルが得られています。このモデルに関連して現れる、二次関数が描き出す美しいパターンの模様がドレスのデザインに用いられています。

数理モデルが描き出す模様をデザインしたドレス(エマ理永、木本圭子、合原一幸 作成):イメージ
数理モデルが描き出す模様をデザインしたドレス(エマ理永、木本圭子、合原一幸 作成)